庭がまんなかの 平面計画
石亭は、敷地の中央にある庭園を中心に展開している。
「まずは、お庭を回遊してみては。」
各客室からは直接庭にでることができ、点在するパブリックスペースへの動線となっている。室内から「眺める」だけでなく、「巡る」ことのできる庭。開放感の演出や景色としての庭だけでなく、 出られる庭は嬉しい。
色付く花や漂う香りによって季節の移ろいを知り、時の流れにはっと気が付く。内外を境なく一体に。やりとりのある庭は 本当に愉しい。
いろんな居場所を つくる工夫
空間は広ければいいというものではない。ほんの小さな片隅でも心の静まる居場所があると幸せだ。
「夜にシングルモルト片手にゆっくりする場所をさがしてみては。」
石亭には身も心も休まる居場所がいくつも用意されている。 客室内には、家族だけの親密な空間、ひとりぼーっと庭を眺めるテラス。パブリックスペースには、開放的な床下ライブラリーテラス、洞窟のような凡々洞、遊びに溢れた穴倉のような吸吐文庫。きっと、実際につくりながら現場で考えたであろう、 思いやりと遊び心に満ちた、い きいきとした空間。 部屋の寸法や空間の拡がりは、人の気持ちや落ち着きに大変に作用する。変化に富んだ空間によって、気分と共に居場所をかえることができる。
ほんの小さな片隅でも心の静まる場所があれば・・・
素晴らしい家具とある時間
石亭は北欧の名作椅子と共にある。
「いろいろ座ってみてくださいね。」
これらは、亭主上野さんのよりすぐりのモノ。 ウェグナーのベアチェア、フィン・ユールのチーフティンチェア、 ポール・ケアホルムのPK22、モーエンセンのスパニッシュチェアやハイバックチェア、ラーセンのエリザベスチェア...。 それぞれの椅子の座り心地、 目線の位置、包まれる感覚を体 験してみる。かつての巨匠達が デザインしたのは、表面的なカ タチの綺麗さではない。大切な 人と盃を交わしたり、ひとり物 想いにふけったり、本の世界を 旅したり、その「時間」なんだと 気付く。
コミュニケーションの場としての風呂
癒しの場として考えられることが多い、風呂。しかし、風呂の時間とはそれだけでない。
「旅のお風呂はご一緒に。」
石亭の客室には全て内風呂が設けられている。少し大きめの浴槽にゆったり湯を張ると、木の香りが鼻をなでる。引き込み式の建具によって外と一体になる浴槽は気持ちがいい。そういえば、子供とゆっくり風呂に入るのはいつぶりだろう。
気持ちの良い、入りたくなるような風呂。大切な人と共にする風呂の時間は、日々の生活においてもコミュニケーションの場としても捉えられるのではないか。
亭主の愉しみを味わう
まるで、亭主上野さんの好みを集めた住まいに招かれたような宿。
「大人心をわくわくさせるものがありますよ。」
客室内はもちろん、点在した ライブラリーやサロンには、選りすぐりの本や音楽、飲み物が並ぶ。ここまで亭主の好き、がみえる宿も珍しい。
〈本〉 手の跡の残る少々くたびれた、多岐に渡る本の数々。 小説、美術、建築、料理、漫画。 一見混沌とした書棚は、そのタイトルを眺めるだけでもわくわくしてくる。
《音楽》 石亭の背景には心地よい音楽がある。くつろぎの中、かすかに聴こえてくるキースジャ レットのピアノ。それは、空間と時間を満たす柔らかな光のよう。バングアンドオルフセンの洗練されたデザインのオー ディオはインテリアに溶け込んでいる。
〈飲み物〉 エスプレッソにハーブ ティー、抹茶、冷酒にワイン、ス プマンテ・・・。種類の豊富さもそ うだが、それぞれが厳選されており、なにより美味しい。四阿でいただいた、外の鮮やかな緑が映り込んだ、冷えたスプマンテは忘れられない。
たとえば、 床下ライブラリーテラス
メインのラウンジの床の下、 庭や池との距離が一番近い場所。
「石亭のパワースポット、ベアチェアでごゆっくり」
一方をガラス戸にて開放的につくり、外と一体にあるといった様子。 床の高さをかえずに滑り込 む土間の上には、北欧の名作家 具が並ぶ。壁面はしっくいのような素材で、乾いた質感の空間は、語らいの時間をやさしく包んでくれる。
たとえば、 すーぱーぶんこ 吸吐文庫
亭主の読みあさったであろう本がずらりと並ぶ、隠れ家のようなライブラリー。
「本に囲まれてシングルモルトでくつろいでください。」
その小さな畳の部屋は、長い夜に静かに閉じこもりたくなる。途中であろうチェスの盤があってなんだか微笑ましかった。
たとえば、 ぼんぼんどう 凡々洞
ひんやり洞窟のような、本当に小さな小さなところ。
「蝋燭をたくさん灯して、音楽をながして、ワインを持ち込んで・・・」
ゆらゆら揺れる蝋燭の灯りに誘われて、ひそやかに思い出話をしてしまいそうな、個人的に大好きな空間。
たとえば、 客室 抱月
池のほとりの二階建て離れ座敷
「お庭のお客様を影絵のように眺めながら、旅を実感する。」
朝夕の食事をいただく座敷にはじまり、光を絞った落ち着きある寝室、庭を眺める大きなテーブルのある小間、ゴロゴロとゆっくり過ごす2階リビング、木の香りが気持ち良い内風呂。時間や場面に呼応する空間が用意されている。
離れのようなつくりとなっており、隣接する客室の存在感はなくとても落ち着く。2階デッキテラスと室内の一体感は新しい体験。