心地よい大人時間の過ごし方

建築家 奥野崇さんの言葉を通して、石亭スタイルをご紹介いたします。
「石亭は、スタイルを超えた調和を目指す宿」

建物は日本建築の要素を多く取り入 れているが、並ぶ家具のほとんどは北欧のもの。飲み物は地元の冷酒はもちろん、収集されたこだわりのワイン、スプマンテと続く。 音楽はクラシックやジャズばかりかと思えば、篠笛の音色の聴こえ てくる。本にいたっては、古今東西多種多様のものが並ぶ。亭主上野さんのチョイスでスタイルもジャンルもばらばらでまとまりなく思えるが、決してそんなことは無い。むしろ心地よく調和している。現代は、何もかもを同じスタイルで揃える時代の気分ではない。それは単純に、同じであることを嫌う、のではなく、ジャンルに捉われない本当に良いものを評価し、認めることである。洋服だってピシッとセットアップで揃えるよりも、好きなものをうまく組み合わせているほうがお洒落に思えてしまう。
瀬戸内の気候風土に適した木の住まいと通風計画、体にやさしく時と共に変化していく自然素材、季節の移ろいを感じる庭を設ける、直接体に触れる家具の重要性。これらのベースを大切にしながら、良いものを取り入れる柔軟性の上に、現代の旅館のあり方を推し進めている。  建築家 奥野崇 筆

 

庭がまんなかの 平面計画

石亭は、敷地の中央にある庭園を中心に展開している。
「まずは、お庭を回遊してみては。」

各客室からは直接庭にでることができ、点在するパブリックスペースへの動線となっている。室内から「眺める」だけでなく、「巡る」ことのできる庭。開放感の演出や景色としての庭だけでなく、 出られる庭は嬉しい。
色付く花や漂う香りによって季節の移ろいを知り、時の流れにはっと気が付く。内外を境なく一体に。やりとりのある庭は 本当に愉しい。
 

いろんな居場所を つくる工夫

空間は広ければいいというものではない。ほんの小さな片隅でも心の静まる居場所があると幸せだ。
「夜にシングルモルト片手にゆっくりする場所をさがしてみては。」

石亭には身も心も休まる居場所がいくつも用意されている。 客室内には、家族だけの親密な空間、ひとりぼーっと庭を眺めるテラス。パブリックスペースには、開放的な床下ライブラリーテラス、洞窟のような凡々洞、遊びに溢れた穴倉のような吸吐文庫。きっと、実際につくりながら現場で考えたであろう、 思いやりと遊び心に満ちた、い きいきとした空間。 部屋の寸法や空間の拡がりは、人の気持ちや落ち着きに大変に作用する。変化に富んだ空間によって、気分と共に居場所をかえることができる。

ほんの小さな片隅でも心の静まる場所があれば・・・

 

素晴らしい家具とある時間

石亭は北欧の名作椅子と共にある。
 「いろいろ座ってみてくださいね。」

これらは、亭主上野さんのよりすぐりのモノ。 ウェグナーのベアチェア、フィン・ユールのチーフティンチェア、 ポール・ケアホルムのPK22、モーエンセンのスパニッシュチェアやハイバックチェア、ラーセンのエリザベスチェア...。 それぞれの椅子の座り心地、 目線の位置、包まれる感覚を体 験してみる。かつての巨匠達が デザインしたのは、表面的なカ タチの綺麗さではない。大切な 人と盃を交わしたり、ひとり物 想いにふけったり、本の世界を 旅したり、その「時間」なんだと 気付く。 
 

コミュニケーションの場としての風呂

癒しの場として考えられることが多い、風呂。しかし、風呂の時間とはそれだけでない。
「旅のお風呂はご一緒に。」

石亭の客室には全て内風呂が設けられている。少し大きめの浴槽にゆったり湯を張ると、木の香りが鼻をなでる。引き込み式の建具によって外と一体になる浴槽は気持ちがいい。そういえば、子供とゆっくり風呂に入るのはいつぶりだろう。
気持ちの良い、入りたくなるような風呂。大切な人と共にする風呂の時間は、日々の生活においてもコミュニケーションの場としても捉えられるのではないか。
 

 
 

亭主の愉しみを味わう

まるで、亭主上野さんの好みを集めた住まいに招かれたような宿。
「大人心をわくわくさせるものがありますよ。」

客室内はもちろん、点在した ライブラリーやサロンには、選りすぐりの本や音楽、飲み物が並ぶ。ここまで亭主の好き、がみえる宿も珍しい。 
〈本〉 手の跡の残る少々くたびれた、多岐に渡る本の数々。 小説、美術、建築、料理、漫画。 一見混沌とした書棚は、そのタイトルを眺めるだけでもわくわくしてくる。
《音楽》 石亭の背景には心地よい音楽がある。くつろぎの中、かすかに聴こえてくるキースジャ レットのピアノ。それは、空間と時間を満たす柔らかな光のよう。バングアンドオルフセンの洗練されたデザインのオー ディオはインテリアに溶け込んでいる。
〈飲み物〉 エスプレッソにハーブ ティー、抹茶、冷酒にワイン、ス プマンテ・・・。種類の豊富さもそ うだが、それぞれが厳選されており、なにより美味しい。四阿でいただいた、外の鮮やかな緑が映り込んだ、冷えたスプマンテは忘れられない。
 

たとえば、 床下ライブラリーテラス

メインのラウンジの床の下、 庭や池との距離が一番近い場所。
「石亭のパワースポット、ベアチェアでごゆっくり」

一方をガラス戸にて開放的につくり、外と一体にあるといった様子。 床の高さをかえずに滑り込 む土間の上には、北欧の名作家 具が並ぶ。壁面はしっくいのような素材で、乾いた質感の空間は、語らいの時間をやさしく包んでくれる。

 

たとえば、 すーぱーぶんこ 吸吐文庫

亭主の読みあさったであろう本がずらりと並ぶ、隠れ家のようなライブラリー。
「本に囲まれてシングルモルトでくつろいでください。」

その小さな畳の部屋は、長い夜に静かに閉じこもりたくなる。途中であろうチェスの盤があってなんだか微笑ましかった。

たとえば、 ぼんぼんどう 凡々洞

ひんやり洞窟のような、本当に小さな小さなところ。
「蝋燭をたくさん灯して、音楽をながして、ワインを持ち込んで・・・」

ゆらゆら揺れる蝋燭の灯りに誘われて、ひそやかに思い出話をしてしまいそうな、個人的に大好きな空間。 

 
 

たとえば、 客室 抱月

池のほとりの二階建て離れ座敷
「お庭のお客様を影絵のように眺めながら、旅を実感する。」

朝夕の食事をいただく座敷にはじまり、光を絞った落ち着きある寝室、庭を眺める大きなテーブルのある小間、ゴロゴロとゆっくり過ごす2階リビング、木の香りが気持ち良い内風呂。時間や場面に呼応する空間が用意されている。
離れのようなつくりとなっており、隣接する客室の存在感はなくとても落ち着く。2階デッキテラスと室内の一体感は新しい体験。